消費者保護

トリュフの中でもとりわけ評価の高いのは白トリュフ(Tuber Magnatum Pico)です。白トリュフはイタリアの食材の中でもっともよく知られ、魅力的な食材です。このトリュフは、採集量は多くはないけれども輸出価格においてはかなりの割合を占め、またたくさんの観光客をひきつけています。これはトリュフの産地に住む人に恩恵をもたらしてきました。このことに気がつけば、地方の有力者やビジネスに携わる人は、この白トリュフを守るための何らかの実質的なイニシアティブを発揮しなければならないと思うでしょう。トリュフの品質を守ること、消費者の権利を守ること、この、すばらしいけれども繊細な自然からの贈り物の成長を守らなければなりません。

アルバの白トリュフにはナショナルトリュフスタディーセンターが作成した品質ランク表があります。これにより、消費者は、専門家が官能的に精査しランク付けしたトリュフを手にすることが出来ます。すべてのトリュフハンターとディーラーは50g以上の良いトリュフが手に入ったとき、その認定を求めることが出来ます。そして最高品質というシールを受け取ります。
よくある苦情ですが、白トリュフのシーズンが過ぎてピエモンテの市場やお店、レストランで供される白トリュフの大多数は、ピエモンテ以外から、さらにはイタリア以外から採集されたものです。そういった白トリュフでもその種が学名Tuber magnatum Picoであるあらば、偽物とはいえません。それらは実際、いわゆる「アルバの白トリュフ」と呼ばれるトリュフの種類なのです。当然ながらトリュフの産地に関しては今日の法規に従い正しく示されなければなりません。しかし、例えばクロアチア産よりもイタリアのランゲ産白トリュフを好んで買うというのは、地産地消の考えに基づき、新鮮でトレースができる安心感、自分たちが住む、もしくは訪れている街への付加価値を高めたいという願いによるものです。もちろんこれはどの地域であれ、Tuber magnatum Pico以外の品種のトリュフが「アルバの白トリュフ」として売られるということとはまったく別の話です。

イタリアでは9種のトリュフが法的に採集可能のため、マイナーな3種を貴重な白黒トリュフと偽って販売する可能性も除外できません。
Tuber(トリュフ)の種類はそれぞれがかなり違っています。官能的だけではなく、生物学的にも形態学的にも様々です。アルバの白トリュフはその色や官能的特徴から区別が付きやすく、一方黒トリュフの種類を見分けるのは困難です。偽物を見抜くため、その世界の専門家や、主にイタリアやフランスに存在するトリュフ産地のリーダー的研究所が科学的な識別方法の開発に励んでいます。DNA鑑定を使用し、特に黒トリュフにおいては、その識別研究が進んでいます。

トリュフの保護

おそらくトリュフに関することで最大の問題点はトリュフの品質と量を生み出せる環境が悪化してきていることです。トリュフがだんだん少なくなってきたことが観察されています。1930年代、トリュフはマスマーケット向きの商品ではなかったのですが、そのような一部のエリート美食家の時代より現在のマーケットは大きくなっていました。
以前においても、今と同様トリュフの減少を嘆いていました。これはトリュフを壊滅的に採集してしまうこと、また技術のない欲の張ったトリュフハンターたちのせいでダメージを受け、その対策のためにその土地の所有者が高い木を切り倒してしまったことなどがあります。また、この30年、森林だった場所をワイン畑にするため木を切り倒してしまったこともトリュフ減少の原因としてあります。

菌学者オレステ・マッティローロは1920年代から既に警鐘を鳴らしてきました。
けれども大きな要因は農業の産業化によって、土地は深くまで機械によって耕され、化学農薬が使われたことです。トリュフのような、とくに共生菌は真っ先にこの環境の影響を受けました。人口の減少や、辺境の土地が放棄されていったこともトリュフの環境の均衡を壊してしまいました。近将来的には土地の水没や気候の変化にも向き合わなければなりません。この状況を改善するために法的かつ計画的な介入が必要です。そして、トリュフに好ましい環境の回復のためトリュフの森の再生のための行動を起こすことが必要です。

トリュフの採集と栽培、販売に関する法律

イタリアではトリュフに関する法律は1985年12月16日に発効した「消費向けの生および乾燥トリュフの採集・栽培・販売に関する法的フレームワーク」が存在します。
1991年5月17日に少々変更が加えられています。

この法律では、9種以外のトリュフの採集と販売を禁止しています。いくつかの地方の法律では例外を設け、Desert tru(この種類は古典の中では、Terといわれるトリュフ)は良いことになっています。プーリアやサルデニア、とくにオリスタノではこのトリュフを採集する長い歴史があるためです。
法律によって、トリュフは森や未開地、そして牧草地で自由に採集してよいことになっています。トリュフを栽培したり育てたりするための改良森(トリュフの共生できる木を植えたりした自然林)のトリュフのオーナーシップを示すため、土地を借りている者はその境界線に「トリュフ禁猟」と、はっきり表示しなければならなりません。

トリュフハンターになれるのは14歳以上です。そして適性試験に合格しなければなりません。それぞれの地域の機関は独自の規則を定め、合格したものには移譲不可の承認を与えます。
それを以ってイタリア全土でトリュフを採取する資格になります。資格取得のためには費用がかかります。それもその地方で独自に決めることができます。トリュフは訓練された犬の協力があって採集できます。また専用の掘る道具も必要です。
その道具(小さな鍬かすきのようなもの)を使用して掘ることが許されるのは犬が既にかぎつけ、掘り始めている場所のみです。

トリュフ採取での禁止事項

・掘り続けること(機械のすきや鍬で80センチ~1メートル掘ること)
・未熟なトリュフを採集すること
・トリュフを採集、探索した後の穴を元通りに埋めないでおくこと
・日没1時間後から夜明けの1時間前までトリュフを採集すること。例外のある地方もある。(ピエモンテでは夜間の採集も可)
・法律はそれぞれのトリュフの採取時期なども定めています。地域によってそれは様々です。

トリュフの販売

白トリュフが売られている店頭決められた期間以外にトリュフを販売することは禁止されています。
フレッシュトリュフは種類ごとに展示されます。充分に熟していて正常の状態で、外来のものや不純であってはいけません。ホールのものはかけたものと一緒にしてはいけません。ペッツィ(ピース)と呼ばれるものは直径5ミリ以上のもの。
トリトゥメ(シュレッド)は5ミリ以下のものです。これらは分けて販売しなければなりません。外来種や腐敗したものは除外し、種類も分けて販売しなければなりません。
ホールでもペッツィでもトリトゥメでも生トリュフはイタリア語かラテン語でその種名と産地を表示しなければなりません。

トリュフの保存

保存・保存用のトリュフは密閉された容器に入れて、パッキングした会社の名前と住所のラベルを貼ります。
・トリュフの名前はラテン語かイタリア語で表記します。ランクとネットの重さも表記されます。
・もし表面を剥いてる場合は「peeled」の表記も必要です。
・保存用のトリュフは水と塩、もしくは塩のみで保存されます。
・ワイン、ブランデーや他のスピリッツを加える場合はラベルに表記しなければなりません。

保存・殺菌は120度で行い、その時間は容器の大きさにより変わります。
・他の薬品(健康に悪いものでない限り)を使用した場合や、それ以外の加工法・保存法を採用した場合は適切でわかりやすい表記をしなければなりません。
・着色してはなりません。
・記載されるネット重量は固体量で、誤差は5%までです。
・容器の中身は以下のようなものでなければならない。
透明な充填液か、Tuber Melanosporum, Brumale, Moschatumには暗い色の液を。
T.magnatum, Aestivum, Unicatum, Masentericumには暗さは様々であっても黄色っぽい液を。

施行と罰則

イタリアでは、森林警備隊が規則を施行することに責任を担っています。
州の監視人、地方や都市部の警察、自然と環境の保護のために機関や委員会から任命されたボランティアの監視人もまた、これらの規則を施行させる責任を持ちます。
規則に反したときは通知から60日以内に最大科料1/3の罰金を支払うことになることもあります。
規則違反は、商品の没収を行い、場合によっては司法機関に通告し、規則の定めるところにより行政的罰と罰金を科すことになっています。

National Truffle Study Centerについて

ナショナルトリュフスタディーセンターは1996年アルバ、ブラ、ロエロの観光局の支局として発足しました。ジャコモ・オッデーロが指揮を執り、トリュフの知識を高めることが目的でした。というのもトリュフは食とワインの観光を促進するにあたり、戦略的な役割を担うからです。2000年以来、センターは法的に自治団体として存在し、そのメンバーにはアレッサンドリア、アスティ、クネオの州の行政部も名を連ねています。
その役割は、トリュフ界のキープレーヤーをこの代表機関に集結させ、この機関を通して研究を深めたり、プロモーションを行ったり、指針を作ったりすることでした。

スタディーセンターはイタリアの最高の研究機関と協力し、2000年以降、官能検査や、種による香りの違いの分析、官能検査の訓練を行っています。
アルバ、アスティ、ムリセンゴ(アレッサンドリア)、モンドヴィ(クネオ)、トリノ、サンジョバンニ・ダッソ(シエナ)にはパネルが設置され、そこでは博物館創立のための技術的なアドバイスを受けられます。トリュフタウンを名乗る他のグループはイストリアやクロアチアで活動したり、トリュフを使った製品の評価を行ったりしています。

センターは人間の活動によって脅かされているトリュフ産出の環境とその境界線を守る活動も熱心に行っています。
トリュフの収穫量の減少を防ぐと同様に、生産を増やすための環境づくりも行っています。地元の人たちと協力しトリュフが守られるための森作りに取り組んでいます。
それはまた今後は観光ルートにも含まれてくるでしょう。

トリュフの官能検査の方法

アルバのトリュフの香りをかぎ分けるのは簡単です。しかも楽しい。けれどその微妙な官能的個体差を嗅ぎ分けるのはとても難しいのです。
スタディーセンターでは膨大な分析プログラムを用い何年もこれに取り組んでいます。そしてそれにより約100人もの官能検査資格保持者が生まれました。
Tuber Magnatum Picoは五感のうちの3つの感覚で評価されます。視覚・触覚・嗅覚です。

視覚分析はトリュフの形に欠けがないかチェックします。それは美的な要素であるだけではなく、そのほうが長持ちするためでもあります。土が残っていると外観が悪いということのみならず、欠点を覆ってしまうため、きれいに掃除されているかどうかも重要な要素です。視覚検査は主観によるトリュフの魅力の判断です。

触覚検査は密度の検査になります。よいトリュフはかすかに弾力があり、ふっくらしていてぎゅっとしています。硬すぎず柔らかすぎず。

最後は嗅覚検査です。香りは色々な香りから構成されていて、その一つ一つは強さや広がり方は様々です。香りこそがトリュフが食材として成功している理由です。
香りを描写するには次のような表現が使われます。発酵している、きのこのような、はちみつのような、枯れ草、ニンニク、香辛料、湿った大地、アンモニアのような。

トリュフの森を再生する

スタディーセンターはトリュフの森の再生のための活動をしています。トリュフがだんだん減少しているためです。
この計画には農作業も含み、アルバの白トリュフが成長できる生態系を再構築する作業なども行います。ナショナルトリュフスタディーセンターはアルバのリソルジメント広場にあります。

トリュフクラブについて

トリュフのメニュートリュフクラブは消費者保護とトリュフをシーズン中、毎日扱う人々の専門性を評価することを目的とする機関です。その活動はIPLAという政府系の機関に移譲されました。そこの株主はピエモンテ州の見識者とナショナルトリュフスタディーセンターです。
トリュフクラブは最高のトリュフを食べさせてくれるレストランのネットワークです。消費者に対し透明性を約束するために、メンバーのレストランは以下のような倫理観と約束を大事にしています。

大きなトリュフ・よいトリュフのみを供給すること。(濃くすばらしい香り。充分に熟していて良い状態)
・メニューに載せる場合はその種名を明記すること。(たとえばTuber Magnatum Pico,アルバの白トリュフなど)
・メニューの中にトリュフとあわせる料理を少なくとも3~4皿入れること。

トリュフ前菜・料理に一番合うトリュフがどれかを明記すること。
・料理名はイタリア語で表記すること。少なくとも英訳はつける。できればドイツ語も。
・トリュフの価格をわかりやすく表記すること。
・お客様の目の前でお皿の上にトリュフを供すること。
・生のトリュフをかけた料理に合成のトリュフ香料を加えないこと。
・トリュフのサンプルをきれいに上品に展示すること。

目玉焼きにトリュフ・Tuber Magnatumの採集の時期を尊重すること。たとえば、解禁時期以外にアルバの白トリュフ料理を提供してはいけない。
・食事客にレストラン以外で購入したトリュフを試食することを許可すること。

 

より詳しい情報はトリュフクラブのウェブサイトへ。

アニョロッティとトリュフ
http://www.truffeclub.org