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閑話休題 「世界で一番美味しい生ハムは…ハモンハブーコかクラッテロか」 |
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生ハムはやはりスペインのものが最高だろう。日本では最近になってイタリアから生ハムが輸入され始め良く知られるようになったが、スペインの生ハムについてはまだあまり知られていないようである。
スペインのハモンセラーノとかハモンベジョータといわれる生ハムは格別に美味しい。メロンをくるんで食べるのだが、一度食べればやみつきになる。話は変るがイタリアにはプロシュートと並んで、最高に美味しいクラテッロという生ハムがあるが、どちらも最高に優れた生ハムなので少し比較をしてみたい。イタリアのクラテッロはごく限られた地域内(パルマ近郊)パダーナ平野の伏流水によって吹く冷たい風を利用して半地下の石室で自然乾燥と熟成をさせて作るのだが、このクラッテロとハモンハブーコを比べてどちらが美味しいのかということについては、甲乙つけるのは難しいということにしておきたいのだが、どうみてもハモンハブーコの方が優れて美味しいと思う。しかしながら料理との相性やワインとの相性によってはクラテッロの方が美味しいと思うことがあり、持ち味の良さを考えればどちらも生ハムの王様といえるだろう。
以前ミラノから約150キロほど南の町でバイオリンのストラデイバリやガダニーニを生産したことで世界的に有名なバイオリンの町クレモナの町に何度か出かけたことがある。この町と生ハムで有名なパルマの町そしてイタリアルネッサンスの頃に一世を風靡した女傑のエザベッラ・デステが君臨したマントバに近い小さい町ピアデナの二等辺三角形を結ぶ地域がクロテッロを生産する地域だ。しかもポ−川の伏流水の風が吹き上がる場所に限定される。日本における販売代理店をしていた関係でパスタノザリ社のマルコ・ガンボー二社長に案内されて何度か会食の途中にその生産現場を訪れている。クラテッロはアルプスの雪解け水が地下にしみこんで伏流水となり地上に再び流れ出すような地域で生産されている。すなわちその冷たい地下水の表層部を大きな川石で整地してその上に目の細い砂利を敷き詰めて、地下の冷たい空気が地上の温度差に反応して冷気が吹き込むのをうまく利用している。その上を石などで囲った天然の冷蔵庫のような場所で長期間つるして熟成させ作るのである。
スペインのハモンハブーコについては以前に紹介した義甥の石谷樹人氏とスペインのマラガからポルトガルのリスボンにドライブした時、二人の意見が一致してどうしてもハブーコ村まで行ってハモンハブーコを土産にするため、訪れることになった。セビリアの町から車で疾走して2時間で吉野熊野の深い山中を思わせるところに小さな部落があり、そこがハブーコ村であった。村の殆どが生ハムつくりに関係している事が一目瞭然としていた。その中の生産現場を視察したいと掛け合ったのだが改めてアポイントを取り直してから来るようにといって、受け付けて貰えなかったのだが、近くにシンコ・ホタスという( 5−シンコ. J−ホタス)5人のJではじまる人たちの経営する会社があり、全国から生ハムを食べるツアーなどを受け入れているのであった。
上質のハモンハブーコは肉に触るだけでなんともいえぬ香りがしてしばらく皮膚にその香りを残す。それがまたたまらなく味覚を刺激してやまないのである。放し飼いで肥育した豚の仕上げにドングリを食べさせているのだがそれがあの香りをつくるのだろう。ハブーコ村の周辺はすべてドングリ山であるそしてそのドングリの樹はすべて50年から100年以上の大木なのだが、地上2メートルくらいの高さで無残に切られていてそこから小枝が無数に出ていて林相としては、異様な感じを与えている。樹木を矮化してドングリを採取し易くしているのだろう。スペインといっても海抜1000メートル前後のハブーコ村の冬は身を切るように寒くて強風が吹く土地柄と聞いている。ドングリと冷たい冬の風がハモンンハブーコにとって必須のものであるらしい。
ハモンハブーコの高いものは現地でもKg当たり1万円以上するものであって、並みの生ハムではない。豚にドングリを食べさせて肥育するので同じスペイン産でも単なるハモンセラーノとは銘柄で区別してある。ドングリで肥育した豚の生ハムのことをハモンベジョータといい、その中でもハブーコ村で作られたもののみがハモンハブーコよばれ珍重されているらしい。大いなる山間の僻村に過ぎないハブーコ村の製品がパリのシャンゼリゼ-近くに店を持っているとの事で驚いた。これに対してハモンイベリコという呼び名は黒豚から作る生ハムを総称していると記憶している、ハモンセラーノは白豚で出来た生ハムのスペインにおける呼び方らしい。
私の古くからの友人で井利さんというスペインは、マラガ近くのマルベージャに15年ほど在住している女性がいる。井利さんは前に述べた三重県の藤田謹司氏夫妻とも共通の友人なのであるが、この人の紹介によってもコスタ・デル・ソル周辺の美味しい店の食べ歩きをしている。この方はまれに見る才色兼備の女性である。素晴らしくきれいなスペイン語を流暢に操ることのできる方で定評の高いご婦人であるが、今まで日本からの政府高官がアンダルシア地方、特にコスタ・デル・ソル方面を訪問したときは、何度となくガイド兼通訳として立ち会っており現地の事情に精通している。
その案内の際には例外なく、日本への土産としてハブーコ村の、いわゆるハモンハブーコ(ベジョータ)を外交行嚢の中に入れて持ち帰るということを聞いた。最近ではこのハモンハブーコも日本に自由に輸入されるようになったが、現地の人たちは、そうなればドイツや日本など金持ち国に良い品がどんどん流れて、美味しいものが自分たちの手に入らないのではないかと心配しているということである。
地中海太郎
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