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フェズのメディナ(スーク・バザール)について |
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メディナだけを見るなら、アラブ世界、すなわち世界のメディナ(バザール)の中で、フェズが突出している。
その規模において、その迷路の複雑さにおいて、そして優雅さと活気において、感嘆する内容と気品を備えたものである。メディナの中には数十万人の人達がマラケシュと同じように生活している。無数の坂道と路地がメディナの中を交差し、外周からはいざ知らず中に入れば車の一台も通っていないのである。タクシーはロバのタクシーである。全ての物資の輸送とてまた然りである。中世に完全にタイムスリップしたように思える。歩けば歩くほど、中世さながらの世界であると思えるのである。
ここのメディナのなかに迷い込んだら、ガイドなしには一生かかっても出てこられないと言うのはあながち誇張ではないだろう。ここのメディナ(イランではバザールといい他のイスラムではスークという)について物語を書こうとすれば、それだけで何冊かの本でもできるに違いない。
需要と供給は良くしたもので、メディナの入口周辺ではガイドが国家の認定バッジをつけて、無数に待ちかまえているので選ぶのにひと苦労するほどである。あるときは、メディナに向かう途中、市街地の何キロも手前の方からオートバイに乗って、私の車を追いかけてきて、赤信号の都度にガイドを売り込んできた者があった。しつこくて振り切るのに苦労した。後から考えてみれば其の彼は家族を扶養するために実に一生懸命仕事をしていたに違いないのである.ウルサイと思い追い払うのに多少乱暴な言葉を用いた自分の事を今は恥じている。
マラケシュのメディナの方が少し優雅でファンタステックではあるが、フェズの方がダイレクトに生活感が伝わってくる。ここはまたイスラム世界における学問や芸術をもリードする知的な町である。イスラムのモザイクタイルによる装飾芸術をより高めたフェズは、モザイクタイルの町としても世界的に有名である。グラナダのアルハンブラ宮殿であろうと、セビリアのアルカサールであろうと、フェズの職人無しにはその装飾が完成しなかったのであろうと思われる。また、ここはダビデの星のマークを家に取り付けているユダヤ人の多いことでも知られている。
時代的に見ると、日本の大和朝廷の頃から、イスラムのアラブは、その頃未開であったヨーロッパに、フェズやチュニジアのカイルアン、そしてコルドバを通じて、医学、化学、天文学等の自然科学分野で大きな影響を与えたのである。それは、今の西欧とイスラムの世界がまさに逆転したかのような関係であったのだ。
現代文明において安易な合理性や利便性を追求することで人間性を失いつつある我々は、この伝統的生き方を続けているイスラムの文化には学ぶことが多いような気がしている。
地中海太郎
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