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閑話休題 |
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私自身の海外経験は、20代前半のアメリカ留学(オレゴン州立大学ポートランド校)に端を発しており、英語での授業を受けながら、勉強にあまり集中できないときなどに、旅行をして見聞を広めようとしたことにある。当時アメリカにあった(今でもあるのかも知れない)米商務省の後援する21 days no limited travel ticketという21日間アメリカ中の飛行機を無制限に使えるという、鉄道旅行で利用するユーレイルパスのようなものがあった。当時1ドル360円の時に、日本円で4万円強だったと思うが、これを利用して、機中泊をしたり、機内食に合わせて食費を浮かせたり、北から南、東から西へと飛行機を何度も乗り換えて旅行し始めたのである。
以来、空港でレンタカーを使うことに慣れてきて、よほどのことがない限り、空港に着くなりレンタカーを借りて旅をするということが私の旅のスタイルなってきている。
そのようなわけで、アメリカも良く旅行して知っているのだが、地中海というこの領域は、そのアメリカとくらべて、はるかに大きいのである。単に土地面積のことを言っているのではなく、歴史上の異質な文化を横断することにおいて、また、人類の文化の起源であるエジプト、ギリシャ、メソポタミアなどの文化の上に立ってみると、アメリカとはとうてい比較にならない奥深さと味わいを持っている、その様な意味で大きく広いのである。
アメリカを旅した私は、その後フランスやイギリス、ドイツといったいわゆる先進国の状況を知りたくて、暇さえあれば会社の経営を誰かに任せて旅をしていた。ヨーロッパに行き始めた頃は、スペインとかイタリアに足をのばすことはあまりなかったが、何度もヨーロッパに出かけるうちに、スペイン、イタリアを旅するようになり、その生活の楽しさや気軽さ、そして、知れば知るほど興味の湧く歴史の奥深さなどを知るようになった。
今では、ロンドンやパリは殆ど通過するのみであり、たとえこれらの都市を経由した場合でも、パリ市内などに宿をとるより、郊外に滞在した方が旅を楽しむには良いと思うように変化してきている。やはり人生の楽しみ方を知っているラテンの人々、そして豊かな食生活を享受しているイタリアなどの方が、視察や研修とかでない、いわゆる自由な旅の行き先としては、圧倒的に魅力があるように思われる。太陽の恵みはもちろんのこと、旅の楽しみには、美しい風光を愛で、豊かな食事と美味しいワインを愉しむことも含まれる。
しかし、これだけでは決して充分ではない。歴史についての奥深い味わいをたのしめるその場に身を置いてみることほどエキサイテングな事も愉しみである。崩れかけた細い路地などは絵画のモチーフになりやすいが、機能のみを重視した現代の超高層ビルなどの絵は絵画として鑑賞に堪えられるであろうか。安いが見栄えが良いだけの建築資材を使って、表層のみをこぎれいにした建物などに、安らぎをおぼえるであろうか。そうはいっても、東京などのようなテンポの速い変化するような都市にあっては、利便さが第一になりやすいこともやむをえない。無機質な生活を送らざるを得ない場合もある。それに逆らうことは難しい場合が多い。そのように都市生活が近代化されるほどに、人々はなんらかのやすらぎをもとめて、旅に出ることになるのだろう。私が言いたいのは、本書で書き綴る地中海沿岸州の歴史と現状等は、これらのことを充分に満たしてくれるれると確信するからである。
アメリカなど歴史の浅い、生活スタイルも単純で、アメリカンドリームなどというたわいのない大量消費による物質文化などとは何か違うのである。TVなどによる影響なのか現代は、そのようなアメリカ文化の良くない表層文化がマスコミなどを通じて、安易に流れていることについては憂慮にたえない。ご存知のようにアメリカは合衆国であり多種多様な民族や文化を取りまとめるために、緩やかなというか普遍性の高いシンプルな規範でなりたっており、かなり単純にして雑な部分も多い訳であるが、指導的階層には、さすがに世界のトップリーダーとしての資質を備えている人もまた多いようだ。
地中海太郎
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