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ナポリからポンペイを経てソレントへ |
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ナポリは南イタリアを代表する都会である。See Naples and then die.「ナポリを見て死ね」と言われるように、景勝の地である。近くにはポンペイの遺跡があり、少し足を伸ばせばソレントも近い。都市国家の時代には、ナポリ王国として独自の統治を行っており、気質や文化もそれに基づいて形成された。ナポリ人は北部のイタリア人とは際だって違っており、明るく人なつっこく非常に調子がよいので面白い。これがイタリア人だと思わせるものがある。しかしながら、前にも書いたことであるが、調子が良すぎて当てにならない、信用できないという声も聞かれる。その通りだと実感させられたこともたしかにあった。しかし、なんと言っても風光明媚な土地柄であり、抜けるような青さの海と空の色は万人をしてナポリに向かわせる大きな理由である。
初めてナポリを訪れたのは1970年初頭だが、当時、市内の車の混雑には驚かされたものである。道路の真ん中に車をとめたままにして買い物などの用足しをする人あり、逆走してくる車あり、自分の知っている限りでは、当時の混雑ぶりは世界でももっとも悪い都市であった。ここ数年の内に2〜3度訪れているが、以前の混雑は緩和されたようだし、あいかわらず、南イタリアの物産の集散地としてにぎわいを見せているようである。ここはまた、シチリアからの海の玄関口としての役割も持っている。
ナポリの満艦飾という言葉があるが、一歩横道に逸れて旧市街の居住地区に入れば、ほとんどの細道で、隣り合ったビルのアパートの窓から互いに上手に物干しの縄をめぐらし、滑車を旨く利用しながら洗濯物を干している風景が見られる。散歩するときには、色とりどりの洗濯物、すなわちナポリの満艦飾の下を歩くことになるのである。生活ぶりが身近に感じられてこれはこれで楽しいものがある。
初めて訪れたときに土地の人に聞いた話では、露天の衣料店や八百屋の店先で、公然と銃やマシンガンが売られていて、警察の見回りがあると、暗黙のサインのもと、衣料品や野菜で覆い隠すなど、物騒な町でもあったらしい。なにしろ、パレルモに本拠地があるマフィアにとって、航空や海洋の便がよいナポリは、彼らにとっての拠点であることは今でも変わらないようである。それゆえ、夜の町はいささか物騒な感じがすることは否めない。その中でもスパッカナポリという通りは、よほど旅慣れた者でなければ避けるべき区域である。イタリアへの旅に慣れてきた昨今は、スパッカナポリを歩いても格別恐いという思いは抱かないが、時折不気味さを感じ、そそくさと明るい場所に早く出ようとする自分に気がつくのである。
カステル・デッローヴォ(卵城)と呼ばれる石造りの堅固な建物があるサンタ・ルチア湾からヴェスーヴィオを眺めれば、ちょうど鹿児島の町から桜島を眺めたような風景で美しい。鹿児島とナポリは姉妹都市であるように記憶している。ナポリは、パスタやピッツァの本場であり、モッツァレラチーズとトマトのシンプルなピッツァ・マルゲリータは特に美味しい。
ポンペイは是非訪れたい場所である。ヴェスーヴィオの噴火によって一瞬のうちに古代の都市が市民たちが逃げまどう間もなく火山灰に埋もれてしまったという悲劇の土地である。50年来発掘が続いているらしいが、調べてみると、西暦79年の噴火とあったので、今から2000年前の市民生活が、その遺跡を通じて手に取るようにわかる貴重な場所である。その頃、山から導水して水道を利用していたことにも驚かされる。馬車の車輪が石畳の上に轍として残ってもいる。歩道は、歩く人のための専用道路として整備されており、ローマ時代の浴場跡も、スチームバス等を含む立派な設備であったことを知ることができる。これらの設備が遠いローマ時代に既に存在していたことに驚きを覚えないわけにはいかない。ポンペイの悲劇は見る者をして厳粛な気持ちにさせられる。逃げまどう市民の姿が、そのままの裸形で化石した現状を見れば、思わず涙してしまう。
コンピュータ時代だIT時代だなどと言って、近代文明の進化進歩によって生活が著しく利便さを増した現在から見ても、当時すでに基本的生活を支えるに必要な設備は十分に整備されており、実は2000年経った今と極端に変わってはいないことを知って、この方にむしろ驚嘆した次第である。イタリアに行くなら、一度は訪れてみたらと思う場所である。
地中海太郎
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