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  地中海の孤島コルシカ
コルシカは決して孤島ではないのだけれど、峻険な岩山だらけで一部を除いて断崖の海岸線が続くこの島は、北西部にそびえるチント山(2700m)に象徴されるように、孤高と頑固さを感じさせる。中世にはイタリアのピサ共和国に属し、近世に入ってフランスに編入されたこのコルシカ島はナポレオンの生誕地としてあまりにも有名である。

北部の古都であるバスティアからはイタリアのリヴォルノ、ジェノヴァ、サンレモなどへ船便があり、北西部のカルビーからはニース、マルセイユへの便がよい。ナポレオンの生地であるアジャクシオからはニースの他にもマルセイユ等へ豪華な客船が就航している。また、南部のボニファシオからはサルデーニャのサンタテレザまたはパラウに頻繁に船便がある。このように、けっして孤島などではないことは明らかなのだけれども、孤高の印象が強く感じられるのはいったい何故なのだろうか。

島の東部の一部を除けば、全島に険しい岩山と洋松の疎林が続いている。街と街の間、村落と村落の間が相当の距離を置いて点在し、一歩間違えば垂直に切り立った深い谷底に転落しかねないような単線道路によって結ばれている。従って本土の暮らし向きとは違い、日々の食生活は、自給できるもの以外の生鮮品などは入手が困難で、塩蔵品や乾物などを使った食材に頼らざるを得ない。

風土によって人間の性格が方向付けられるといわれるが、同時に日々の食生活も人柄、気質に少なからず影響を与えるということは自然の成り行きであろう。島民の食糧が果たして確保されているだろうかと思えるほど耕地の少ないこの島は、しかし個性的な植物も多く、松の他にチェスナッツや樫の木等に混じって、ミルト(ミルテル)の木が高くそびえ、またその根元には、この島原産のシクラメンが群生している。シクラメンの野生種は、日本で見られる大ぶりの花とは違い、ひとまわり小さく、ちょうどかたくりの花のようである。

5月にこの島をドライブした折には、野生のクリスマスローズとシクラメンが山道の至るところに咲いていた岩山にそびえる疎林は強風にさらされて、樹木の生成もいびつになっているものが多く、上の方に伸びずに地中深く根がこぶとなって育っている。したがってパイプ煙草のブライアーの材料は、コルシカ産のものが最高品質として知られている。

しかし、頑固で孤高を強いられるこの島の人々は一旦心を許せばとても濃密であり、暖かい心を持った人達である。旅をする者に対し愛想がよいとは言えないが、質朴で懐かしい思いを発見できる島でもある。あまりにも急速に進みすぎた日本のような都会からの訪問者には、かならず旅情が満たされるものと信じる。

この島のもうひとつの側面として、戦前には麻薬等の生産地としても知られ、マルセイユの暗黒街とも深い関わりがあったことである。マルセイユの麻薬犯罪集団はフランス当局による一斉摘発により撲滅したらしい。このフレンチコネクションと呼ばれた組織が撲滅されたため、麻薬犯罪はコロンビアやイタリアのカラーブリア州に移ったらしく、今ではコルシカはそれほどでないようだ。針の山で作られたようなこの島の地形は、地元の人しか近づけないような場所も無数にあると思われる。

島を巡る交通機関も不便極まりないのでレンタカーに頼るのが一番だが、地質は細かい砂利を含んでおり、路肩が滑りやすくとても危険である。山道は乗用車が対向するにはぎりぎりの幅なので神経を集中しなければならないので疲れる。孤立した山の中の村落を訪れたりするのも楽しみであるが、初心者や中級クラスの旅行者にはドライブは不向きであろう。

地中海太郎

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